アイディアをデザインする~2025

先日出店したアーツアンドクラフツにて、お客様から「これはどうやってデザインしようと思いついたのですか?」とご質問をいただきました。
中でも印象深かった出会いは、レザークラフトを最近始めたばかりという中学生さん。独学で縫製を調べて、既存のパターンからいくつか作品を作っていました。
ただ、自分自身でデザインしで製作していきたいということで、商品を作る過程を知りたいとのこと。
丁度新作で出来上がったばかりだった「ワイヤーステッチカードケース」がお目に留まったらしく声をかけてきてくれたのです。
「デザインする」なんて大層なものはありませんが、小さなブランドだからといってありきたりなものを作るつもりはなく、お使いいただくお客様がどれだけ「素敵」だと感じていただけるかを、探求してお作りしています。
ですから、このご質問に驚きはしたものの、とても嬉しい出会いでした。
咄嗟の出来事と、お客様方と対面する機会の乏しい私たちは、商品のデザインプロセスに関して質問されるなんて思いもよらず、二人で何度か顔を見合わせました。
答えは持っていても、想定していなかった状況では言葉に詰まるものです。
そしてせっかくの機会ですので、その時お話させていただいた内容も交えながら、私たちのデザイン過程を、この場で改めてお話させていただこうと思います。
そもそもデザインとは
「design」という言葉は、ラテン語の動詞である、「designare」に由来しており、目的や機能を考慮しながら、素材、用途、時間、機能などのあらゆるカテゴリーを組み合わせていくことだそうです。
私たちでいうと、「革」という素材を使用し「使用用途」「機能性」とを組み合わせて、なお且つファッションアイテムの一部となる、見た目の「おしゃれ」を追加していく作業。といったところでしょうか。
ブランドを立ち上げたばかりで、まだまだ商品も少なく、アイテムもこれから増やしていかなければいけないという頃。
「レザーブランドならこのラインナップかな。」という理由でアイテムを製作しておりました。
ですから、「用途」を先に考えて、「見た目をデザインする。」という流れです。
でもこれではなかなか自分たちの思い描くアイテムを作れませんでした。
試作品を作っては「悪くはないけど・・・。」とパッとしない反応を繰り返す。そんな悶々とした製作期間を数ヶ月過ごし、何度もA`kenoらしさを追求することとなります。
作ろうとするアイテムの用途を脳内で想像できるが故に、その脳内のアイテムの形が邪魔をして、自分たちのブランドらしさを加えてデザインしていくことに苦戦していたのです。
とにかくインプットする
自分の手で何かを作り出す仕事をしている方なら、当たり前かと思いますが、とにかくインプットしないことには、アウトプットはできません。
デザインする作業に苦戦していた私たちは、目の前の試作品とデザイン画に、にらめっこすることを辞め、とにかくあらゆるショップを見て回る時間も大切にしました。
同時に雑誌をなん百冊も読み漁り、トレンドを知るべく、時間を見つけてウィンドウショッピングに繰り出す。そして、もちろんネットでの情報収集も欠かせません。
特にファッションブランドである「Sacai」や、「Dries Van Noten」の配色や、アイテムの作り方には多くの刺激をもらっています。
革小物を作る私たちにも、参考に出来る考え方はないものか。と常々学ばせていただいております。
そうやって、様々なものをインプットする作業の中、私たちが心掛けていることは「全ての商品に目を向けると言う事。」
レザーショップだからといって、革小物だけを見ていては新しいアイディアどころか、作りたいアイテムすら思い付きません。他のファッションアイテムからのインスピレーションをどうやって革で商品化しようか。と想像を巡らせる自由な頭でいることも大切です。
「革」という素材を一度忘れて、作りたいものをひたすら想像しながら見て回る。この時間が一番有意義かもしれません。
そうしているうちに、「こんなの革で作れないかな。」と思いつくのです。
そうやって生まれたアイテムたち
シュシュストラップ

最近ちらほら見かける、手持ちを便利にしてくれるストラップですが、昆布からできた素材に出会い、「この素材を革と組み合わせて作れない。」と試行錯誤している時に見かけたストラップ。昆布のしっかりした生地を使用することで、丈夫なシュシュ部分が作れましたし、その素材だからこそ、ショルダー掛けにした時にしっかりと肩にかかってくれるアイテムとなりました。
エンブレムカードケース

革靴のローファーのサドル部分を、そのままカードケースの表の顔にしたてたカードケースです。
不必要かもしれませんが、カードケースにも表となるようなデザインがあってもいいよね。ということで、カッコいいローファーのデザインを拝借。
最近私たちのブランドの中で定着しつつある、ワイヤーステッチをあしらえてA`kenoらしさも加えたアイテムです。
ラッピングバッグ

紙袋のラッピングが主流ですが、ラッピング自体が贈り物でも素敵なのでは?と思いつき、丁度0.5mmの革を持て余していたこともあって作ってみたラッピングバッグです。
折り紙の本を見ながら、通常のラッピングバッグの折り目をマネしながら、革で製作しました。ネーミング通り、贈り物としてお作りしたものでしたが、販売開始してみると、皆様ご自分用にご購入されているとか。
Sサイズは、リップケースや印鑑ケースとして。
Mサイズは、大切な写真やお手紙を入れている方も。
作り手は黙々と作る時代ではない
私たちのような俄か作り手が言うべきことではないと思いますが、どんなにいい作り手で、どんなに完璧なものづくりをしていたとしても、今の時代で生き残っていけるかは難しいのかな。と漠然と感じております。
伝統工芸品も「いまどき感」をしっかり取り入れ、今の暮らしになじむものづくりを行っている作家さんをたくさんお見掛けしてきました。
基本がしっかりとしているだけではなく、そこに「現代」が混じることによって、より魅力的に進化するものづくりが出来るなんて、なんと羨ましい。
私たちは伝統工芸品作家ではありませんが、小さなブランドだからこそ、この「デザインする」という作業は疎かにしてはいけないと思うのです。
これから商品を作り続けていく中で、この考えがどう変化していくのかは分かりませんが、A`kenoは一つひとつ「デザインする」という作業を大切にお作りする姿勢を忘れずに進み続けようと思います。
そして、こうして出来上がった商品がきっとお客様の傍で「素敵」なアイテムとなってくれることと思いますし、その商品がきっかけでお客様同士のご縁が育まれていく。
これは私たちA`kenoが掲げたコンセプトである「Superb:素敵」「Clarm:安心」「Connect:繋ぐ」をきっと実現してくれると願っております。
