福岡アーツアンドクラフツ２０２５を終えて

１１月１５日１６日の二日間。

福岡の舞鶴公園内で「福岡アーツアンドクラフツ２０２５」が開催され、私たちA`kenoも出店して参りました。

会場内は大賑わいで、不慣れな私たちは、小さな什器だったにも関わらずバタバタバタバタ・・・。

そして「他の出店者さんは体力あるな。」と感心しているうちに終了。

高揚感と疲労を久々に感じながら帰宅しました。

１１月中旬の開催ということで、寒さが気がかりでしたが、二日間それはそれは気持ちのいい晴れ間に助けられ、厚着をしていた私は少し厚いくらいでした。

こういった出店は一年ぶりということもあり、変な緊張をしながら不安を抱えて店頭に立ちましたが、他の出店者様にも、ご来場のお客様にも、温かいお言葉をかけて頂き、忙しくも楽しい、貴重な時間を過ごすことができました。

そもそもアーツアンドクラフツって？

私はお恥ずかしながら「アーツアンドクラフツ」が一体なんなのか全く知りませんでした。今回イベントに出店するにあたって初めて調べ、英国のウィリアル・モリス氏の事をより尊敬する機会になりました。

アーツアンドクラフツ運動の発端

１９世紀後半。イギリスのテキスタイルの先駆者でもあるウィリアル・モリスは、資本主義への流れによる産業革命により、モノの質が低下することを懸念しました。

大量生産によって低価格なモノを手に入れられるようになっていく一方で、美しくも質の高いギルドの工芸品は衰退していく。

「生活に必要なモノこそ、美しくあるべき。」と唱えたウィリア・モリスはこの流れに反発するべく、「アーツアンドクラフツ運動」の指揮をとります。

機械による大量生産では出す事のできない、手作業の美しさとオリジナリティーは、生活の中に彩を与えてくれますが、やはり特級階級の人々に限られてしまい、一般市民には手の届くものではありませんでした。

しかし、ウィリアル・モリスは芸術を一般市民にも広め、テキスタイルだけにとどまらず、建築、作家としても幅広く活躍していきます。

現代にウィリアル・モリスが与えた影響

ウィリアル・モリスの芸術的なデザインは、モダンデザインの源流となり、世界中の家具や建築の礎ともなりました。

また、単なる運動に止まらず、生活の質や労働者の環境も改めるきっかけとなり、社会全体へ大きな影響を与えます。

その後、彼が指揮をとった「アーツアンドクラフツ運動」は英国の中だけに止まらず、世界中に広まり、手工業の職人たちの集う場となっていったのです。

テキスタイルで有名なウィリアル・モリスのことはもちろん存じておりましたが、社会にも建築にも、そして人々の思想にも大きく影響を与えた方だと知り、そして何より一世紀以上のちの今、私たちが出店するイベントとして開催され、受け継がれているということに感銘を受けました。

福岡のアーツアンドクラフツ

今回の開催が第２回。古くからあるイベントではありませんが、ずらりと並ぶ１３０以上のクラフト作家の商品は一点一点に丹精込めて作られた、温かみと気品がありました。

その中に肩を並べさせていただいただけでも嬉しい時間だったのですが、お客様からの数々のお言葉にたくさんの感謝をいだきました。

ネット販売では感じられなかった感情

そもそもユニセックスなデザインと、年齢を問わないデザインを売りとしている私たちA`kenoですが、いつもはお客様と対面できる機会が少なく、どんなお客様に好まれているのか知る術がないのです。

ですので、せめて一年に一度は、こういった機会を設けて、実際に体感することはとても重要だと考えております。

「今回は一体どんなお客様に出会えるのだろうか。」

そんな期待をしながら臨みました。

三回も足を運んでくれた学生さん

二日目の昼下がり。

男子高校生が無言で商品を眺めておりました。その時は軽く言葉を交わした程度で去っていき、その後すぐに戻ってきてくれたのです。

「先ほども来てくれましたよね。」

そうお声かけすると、

「イベントのお店の中でここが一番かっこいいです。特にこのカードケースがすごくかっこいいです。」

そういって「ワイヤーステッチカードケース」の黒を指さしました。

シルバーのワイヤーのステッチがチャームポイントで通常の革と、シュリンク模様の革のツートンで仕立てたカードケースです。

革の組み合わせと、ワイヤーのステッチのデザインや太さ、あれやこれやと夫婦で試行錯誤してやっと出来たのがこのカードケースです。

完成までにかなり時間を費やしたアイテムでしたので、この男子高校生のお言葉はとても嬉しいものでした。

その後、値段をお伝えし「良ければInstagramも見に来てくださいね。」とショップカードをお渡しして終了。

かと思いきや、今度はご家族を連れてもう一度舞い戻って来てくれたのです。

私も思わず「おかえりなさい。」と声をかけてしまいました。

聞くところによるとご家族は「すごく素敵な商品があるから見てほしい。」と呼ばれて一緒に来てくれたそうです。

笑顔が素敵なお母さまと、温和な印象のお父様。それからご兄弟と思われる方も含めて総出で、店頭に来てくれました。

その日は家族写真を撮りにお出かけをされた帰りだったそう。

とても仲睦まじく温かな雰囲気が伝わってくるご家族でした。

何度も見に来てくれただけでなく、「他の人に紹介したくなる商品を作ることが出来ている。」このことは私たちをとても励ましてくれましたし、心が強くなれました。

ネット販売のメリット・デメリット

メリットはやはり店舗を持たない分、コストを抑えることが出来ると言う事ではないでしょうか。

資金がなくとも商品さえあれば、距離に関係なく商品を届けることができる。それはつまり日本だけに止まらず、世界中に向けて届けることも可能だということ。

しかし、やはりお客様の反応を直に感じる事ができないというデメリットもあります。

特に量産品ではなく、一点一点大切にお作りしているクラフト作家にとって、お客様のお声が聞けないのはとても不安なことです。

どんな人が立ち止まってくれているのか。ただ黙々とデザインして製作していては不安になってしまう瞬間が訪れます。

アートではなくあくまで商品

アート作品であれば、自分自身を最大に投下したモノづくりでいいのでしょうが、日常的にお使いいただくもの、ファッションアイテムとなるものをお作りしている私たちはそうはいきません。

デザインも含めて使用感まで考慮した商品作りは、当然必要になってきます。

ものづくりをしている作家さんなら、誰しもぶつかる壁ではないでしょうか。

まとめ

アイテムを作り出す工程で試行錯誤を繰り返し、「これでいいのか」「この方が良いのではないか」と時間をかける。私たちは今後もその工程を妥協することなく繰り返していきたいと思います。

そしてこの記事を書き上げている今、今回人気だったワイヤーステッチの次回作を練っております。

今回お会いできた皆様が、また何かしらの折に私たちのサイトを訪れた時に、また素敵と感じていただけるアイテムを増やしておかなければ。